気まぐれに何か書きたくなった今日は『球詠』について雑語りをすることにしました。『球詠』はきららフォワードで連載中の女の子が野球をする漫画で、単行本は現在11巻まで出ており、2020年にはアニメも放送された人気作です。
トピックは次の二つ。前者は布教という側面が強いので誰でも読んでほしい、後者は原作ちゃんと読んでる人向けかな。本当はもっとトピック用意してたんだけどいざ書き始めると疲れちゃった。
アニメ版ついて。
2020年の春アニメです。
私はアニメで球詠を知って好きになって原作を買った勢なので、もっと色んな人に球詠のアニメを見てほしいのですが、球詠を布教する際にいつも邪魔をしてくるの問題があります。そう、作画です。
球詠はアニメも良いんだけど、人間におすすめすると「作画が笑」って言われがちなの渋い。
— 七果さん。 (@LiEat_D) 2022年7月22日
制作のstudio A-CATはCGにはかなり強いのですが、手描きの方はそこそこで、コロナ禍の最初期というのも相まって作画が不安定になっています。とはいえ例えば研究室の先輩に見せたところ「作画悪いって聞いてたけど普通に見れるね」という反応をもらいました。そうなんです、評判ほど崩れたり描写を省略したりなんてことはしてないんです。
むしろ「きらら=デフォルメのかわいい女の子」というイメージとは真逆の頭身が高くてゴツいリアル志向のキャラデザだったことが、作画が悪いという評判にクリティカルに効いているように思います。ガチバイク作品なのにきらら的な女の子のかわいさを求められた『スーパーカブ』などと同じく「視聴者の勝手な先入観のせいで評価が下がった作品」の一つだと思います。
作画の話は避けられませんが楽しい話でもないのでこれくらいにして、アニメを見て何がそんなに七果さんにハマったかの話をしましょう。原作者のマウンテンプクイチ先生は「女の子しかいない世界」至上主義者で、七果さんは百合のオタクなので、当然百合の話になります。見た人ならみんな「はい」と言ってくれると思うんですが、よしのぞです。マネージャーの芳乃ちゃんとチーム最強打者の希ちゃんの百合です。
球詠という作品のメインは間違いなくバッテリーを組んでいる投手・詠深ちゃんと捕手・球姫ちゃんのたまよみカプなのですが、アニメに限って言えばどう考えてもよしのぞがメインです(個人の見解)。だって限られた尺でたまよみの描写はじわじわ削られているのに、よしのぞの描写はほとんど削られてないんだもん。中盤で芳乃ちゃんが希ちゃんを励ますところから、終盤で希ちゃんが芳乃ちゃんを励ますところまで、希→芳という感情矢印が話数が進むごとにどんどん溜まって溜まってとうとう綺麗に芳→希クソデカ感情が伸びるところまでマジで芸術ですよ。もちろん原作と同じ展開なんですが、途中で挟まるその他の描写が尺の都合で少ないおかげで非常にわかりやすく、よしのぞのためのアニメ化では???タイトル『よしのぞ』に変えようって感じです。
七果さんの心のなかのランキング、百合告白部門1位アニメです。どうぞよろしく。そして気に入ったら原作6巻の巻末おまけ漫画もぜひ読んでください。
川口息吹について。
コピー能力者で野球センスの塊、体がしっかり出来上がりさえすれば作中最強説もある息吹ちゃん。人間、こういう存在好きですよね。
そんな息吹ちゃんは双子の妹である芳乃ちゃんのおもちゃにされたり、センスの良さからキャプテンに目をかけられたり、素人同士として白菊ちゃんと一緒に練習したり、芳乃ちゃん繋がりで希ちゃんと仲良くしてたりと色んな人と絡みがありますが、誰かとカップリングされたり話題の中心になるよりも「見る人」という立場の強いキャラクターだと思います。
人の動きを見ただけですぐコピーできる能力、力がなくてヒットは打てないけど選球眼がピカイチで四球を取りまくるスタイル、キャプテンを参考にどんどん上手になる守備、球姫ちゃんよりも先に詠深ちゃんのフォームの癖に気づく観察力。場の空気や人の感情に誰よりも敏感で、白菊ちゃんの神仏照覧・柳大川越との再戦・光ちゃんから希ちゃんへの宣戦布告・そして11巻といった作中のあちこちで繰り返し「息吹ちゃんは周りのことを非常によく見ている」ことが強調されており、同時にグラウンド上ではともかく人間関係上ではひたすら傍観者止まりであることも強調されています。
光ちゃんが希ちゃんへ宣戦布告したシーンでは一瞬で希ちゃんの横からキャプテンの後ろに逃げ隠れており単行本のおまけ漫画のネタにもされていますし、11巻ではひたすら息吹ちゃんが詠深ちゃんの苦悩に気づいて理解しながらも声がかけられない様子が描かれました。息吹ちゃんはいつも詠深ちゃんの中学時代の悔しさを思いやって泣いてくれていたし、嫌なことを言われて詠深ちゃんが一瞬曇ってるときもいつも心配そうに後ろから見つめていました。11巻では誰よりも詠深ちゃんの気持ちを理解してチームのみんなに伝える役割を担いました。でも詠深ちゃんに直接心配の声をかけたことは全然ないんですよね。
詠深ちゃんのクラスメイトであり日常パートではなんだかんだ球姫ちゃん以上に詠深ちゃんと一緒に行動している息吹ちゃんは、しかし何かあっても「心配して見てるだけ」「周りの人に声をかけるだけ」で詠深ちゃん本人に直接なにかアクションを起こすことをしない。私は詠深ちゃんのために何度も泣いてくれた息吹ちゃんが好きなんですよ、そして詠深ちゃんと息吹ちゃんに親友になってほしいんですよ。女性同士の恋愛が当たり前なマウンテンプクイチ世界において、たまよみやよしのぞのような約束されたカップルがいる作中において、二人には恋愛ではない強い信頼関係で結ばれてほしいんですよね。だから見てるだけではない、勇気を出して踏み込める息吹ちゃんがいつか見たくて仕方がありません。